省エネは業務改善の入口|環境経営を利益改善につなげる考え方

省エネは、業務改善の入口の一つになります。電気や燃料、原材料の使い方から環境負荷の発生原因をたどることで、利益を圧迫している業務上のロスにも気づけるからです。
私は、環境経営を本業と結びつけて捉えることを大切にしています。そこで必要なのは、環境を意識することだけで終わらず、使用量を把握し、原因を分析し、改善を試して効果を確かめることです。その行動が、環境負荷の低減と利益改善の両方につながる可能性を生みます。
「それなら最初から業務改善でよい」のでは?
これは自然な疑問です。業務改善の中に省エネを含めることはできますし、すでにその視点で現場を見直している会社もあるでしょう。
そのうえで、省エネという具体的な点検軸を加えると、普段とは違う問いを立てられます。
例えば、「同じ生産量なのに、なぜ電力使用量が違うのか」「生産していない時間に、なぜ設備が動いているのか」。こうした問いから、設備そのものだけでなく、段取りや待機時間、運転方法を見直すきっかけが生まれます。
「この作業は必要か」という見方では問題に気づかなくても、「この時間帯に使っている電力は、何のためか」と考えると、確認すべき点が明確になることがあります。新しい改善手法を増やすというより、見慣れた業務を別の角度から点検する、と捉えると分かりやすいと思います。
なお、省エネは環境経営の一部です。同じ考え方は、原材料の使い過ぎや食材の廃棄など、省資源や廃棄ロスの削減にも広げられます。
環境面の着眼点を、業務上の原因につなげる
使用量や廃棄量が多いと分かっても、それだけでは改善策は決まりません。「どこで、なぜ生じているか」を業務の流れに沿って確認します。次の表は一般的な想定例であり、実際の支援実績や成果を示すものではありません。
| 環境面の着眼点 | 業務上の原因 | 改善策 | 期待できる経営効果 |
|---|---|---|---|
| 製造業:生産量に対して電力使用量が多い | 段取りの長期化による待機運転、必要以上に長い設備稼働 | 段取りや稼働時間を確認し、停止可能な時間と運転方法を見直す | 電気代の低減、設備を使える時間の確保 |
| 飲食業:仕入れた食材の廃棄が多い | 販売予測と発注量・仕込み量のずれ | 曜日や時間帯別の販売実績を確認し、発注・仕込みを調整する | 材料費と処分費の抑制、仕込み負担の軽減 |
| 運送業:配送量に対して燃料使用量が多い | 低い積載率、重複配送、長い待機 | 走行距離や積載率、待機を確認し、配送の組み合わせを見直す | 燃料費の低減、車両・人員の余力の確保 |
表の原因は、あくまで確認すべき仮説です。例えば設備の運転には品質維持のための理由があり、配送には納品時間の制約があるかもしれません。現場で理由を確かめ、品質・安全・納期を保てる改善策を選ぶ必要があります。
廃棄するものには、処分費以上のコストがある
廃棄による損失を考えるときは、ごみの処分費だけに目を向けないことが大切です。捨てる材料や製品には、購入した材料費に加えて、加工や保管に投入したエネルギー、作業時間も含まれています。
例えば、料理を仕込んだ後に廃棄すれば、食材だけでなく、調理や冷蔵に使った電気・ガスと、仕込みにかけた時間も活用できなくなります。「廃棄量を減らす」という環境面の目標から、発注や仕込みの判断までさかのぼって考える理由はここにあります。
こうしたコストを意識すると、処分費が小さいという理由だけで、改善の優先順位を下げずに済みます。ただし、投入した作業時間のすべてが、そのまま削減できる人件費になるわけではありません。
まずは対象を一つ選び、四つの手順で試す
最初から全社のデータを細かく集める必要はありません。気になる対象を一つ選び、小さく確かめる進め方を勧めます。
- 対象を選ぶ。 電気、燃料、原材料などから、負担が大きいものや、無駄が気になっているものを選びます。
- 業務と結びつけて把握する。 使用量や廃棄量を、工程、時間帯、生産量、配送量などと一緒に記録します。
- 原因を考え、改善を試す。 数字に違いが出る場面を現場で確認し、運転時間や発注方法の調整など、実行可能な方法から試します。
- 環境面と経営面の成果を確認する。 使用量・廃棄量の変化に加え、費用、作業負担、品質などの変化も確かめます。
効果を見る際は、使用量の総量だけで判断しないことが重要です。単に生産や配送が減ったために、使用量が下がった可能性もあるからです。
例えば仮に、電力使用量が1,000kWhから900kWhに減っても、生産量が100個から80個に減っていれば、1個当たりの使用量は10kWhから11.25kWhに増えています。これだけでは、省エネが進んだとは判断できません。
この「生産量など一定の活動量に対する使用量」を、原単位と呼びます。総量と原単位を併せて見て、製品の種類や気温、配送先などの条件の違いも確認すると、改善による変化を判断しやすくなります。
利益への効果は、費用と手間まで含めて判断する
使用量が減っても、新しい設備の導入費用や保守費用、記録・管理にかかる手間が大きければ、期待した利益改善につながらないことがあります。削減できる費用と、追加で必要になる費用・作業を並べ、継続できる方法かを検討しましょう。
また、電気代や燃料費は単価によっても変わります。請求金額だけでなく使用量も見ることで、単価の変化と改善の効果を分けて考えられます。
作業時間の短縮も、直ちに人件費の削減になるとは限りません。生まれた余力をほかの業務に回したり、同じ人数で対応できる量を増やしたりする効果として捉え、その余力をどう活用するかまで考えることが大切です。
省エネや省資源をきっかけに、何に資源を使い、どこでロスが生まれているかを問い直す。私は、その積み重ねが、環境経営を日々の経営改善に結びつける道筋になると考えています。
﨑山経営相談室では、経営診断・利益改善の支援として、業務フローの整理、改善の優先順位づけ、実行計画の検討をお手伝いしています。自社の無駄をどこから確認すればよいか迷う場合は、業務改善についてご相談ください。
著者:﨑山 舜也/﨑山経営相談室代表・中小企業診断士・認定経営革新等支援機関

